中小企業新事業活動促進法 ≪徹底活用ガイド≫
2.経営革新計画
経営革新とは、事業者が「新事業活動」を行うことにより、「経営の相当程度の向上」を図ることをいいます。ここでは経営革新計画の必要条件である「新事業活動」と「経営の相当程度の向上」を見ていきましょう。
2−1「新事業活動」とは
「新事業活動」とは「新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動をいう。」とされています。
そして「個々の中小企業者にとって新たな事業活動であれば、既に他社において採用されている技術・方式を活用する場合でも原則として支援する。但し、業種ごとに同業の中小企業(地域性の高いものについては同一地域における同業他社)における当該技術・方式等の導入状況を判断し、それぞれについて既に相当程度普及している技術・方式等の導入については支援対象外とする。」となっています。よって、同業種において相当程度普及していなければ、個々の企業にとっての新たな取り組みは、原則として承認対象になることを意味します。
「新たな取り組み」の具体的事例(中小企業庁経営革新課 編集・発行「今すぐやる経営革新」より抜粋
このように「新たな取り組み」とは、革新的、画期的な新商品やサービスのみを指すのではなく、あくまでも企業の日常の取り組みの延長であると考えられます。日常の取り組みで「うまくいっていること」、すなわち企業がこれまで培った技術やノウハウをベースとして、「新たな取り組み」へと発展させていく。そのためには、「今現在うまくいっていて、利益につながっている取り組みは何か」「今後、その取り組みをどう発展させていくのか」というステップで検討することが有効であると考えます。
しかし考えてみれば、これは経営革新計画承認企業に限らず、どの企業でも、程度の差はあれども日常行われているはずです。なぜなら企業は長い間同じことを続けていては、いずれは衰退し淘汰されてしまいます。そうならないのは、経営者や従業員が日常的に新たな取り組み(経営革新)を行っているからで、とすると継続企業であるなら、経営革新とは日常的取り組みの延長に他ならないのです。いずれにしても経営革新をあまり難しく考えすぎないことです。
2−2「経営の相当程度の向上」
促進法にいう経営革新計画では、次に挙げる二つの経営指標について、3年計画、4年計画ないし5年計画のそれぞれの計画期間終了時における目標伸び率が基準を充たすものであることを求められています。
@「付加価値額」または「従業員1人あたりの付加価値額」
A「経常利益」
「付加価値額」または「従業員1人あたりの付加価値額」は、そのいずれかが計画期間終了時において、年3%相当(3年計画の場合9%、4年計画12%、5年計画15%)以上の伸び率となっていることが必要です。付加価値額とは企業の生み出す価値をいい、その算出にはいくつかの方法がありますが、促進法では営業利益+人件費+減価償却費の合計額をいいます。
もう一つの指標「経常利益」の伸び率は、旧法支援法では要件とされていませんでしたが、促進法において要件に加わりました。「経常利益」は計画期間終了時において、年1%相当(3年計画の場合3%、4年計画4%、5年計画5%)以上の伸び率となっていることが必要です。
なお、促進法における「経常利益」とは、基本方針には「資金調達にかかる費用(支払利息、新株発行費等)を含み、本業と関連性の低いもの(有価証券売却益、賃料収入等)は含まないものとする。」とあり、具体的には営業利益−営業外費用で計算します。そのため、企業会計上の「経常利益」とは、算出方法が異なるので注意が必要である。このように「付加価値額」及び「経常利益」いずれについても、絶対額の伸び率が要件とされており、「付加価値率」及び「経常利益率」の伸び率が要件とされていないことに留意すること必要です。